No.13 96/7/25 地価の動向


中長期の地価の動向に関する情報が、2件同じ方向を示していたのでお知らせします。いずれも中長期的に地価はさらに下落することを示していました。

1件は東京工業大学同窓会会誌「蔵前工業会誌」1996年7月号で、愛知学院大学教授 経済評論家 松本和男氏の講演の抄録です。

もう1件はいつも情報をいただく、久米繊維工業の久米社長からのメールで、小宮企画開発の鈴木常務からの同社のニューズレターの内容をお知らせいただいたものです。

私は、こういう分野に関して全く詳しくはないのですが、これらの情報は論理的で、十分納得できるものでした。

------------------松本和男氏の講演のポイント------------------

・地価はバブルのピーク時に比べて現在まで大きく下落しているが、戦前基準の1936年9月からバブルのピークの1991年9月まで、全国市街地価格は20,928倍になっている。(6大都市では3万倍)
このため、土地は現在でもまだまだ有利と見る人が多い。

・不確定な未来で、唯一かなりの角度で1世紀先まで予測できるのは人口である。戦前、終戦直後の出生率は4−5人だったのが、1.5人前後に低下している。これが今後も続くと、単純計算で100年後には日本の総人口は現在の半分以下になる。

・以前の地価高騰の背景は、日本の人口が倍になり、同時に戦後の近代化工業化の過程で農村から都市へ、人口の大移動が行なわれたためである。

・最近、都市機能の地方への分散ということが叫ばれていることも考えると、今後は裏腹の現象が現れることになる。

・さらに高齢化により、1人当たりのGDP(国内総生産)は伸び悩む。つまり経済の長期停滞が懸念される。

・結論は、もし政府の施策により地価が戻ったら売り、絶対に買ってはいけない。

------------------久米さんのメールからの転載------------------

■林社長があげた理由:土地の輸入

農産物輸入自由化や、工業生産拠点の海外移転=空洞化で、国内の土地が不要になる。これは、土地の輸入と同じような効果を持つ。

平成5年には、食糧輸入額は467億ドルにもなり、これを国内ですべて生産したとなると、農地面積は1430万haも必要になる。これは日本の国土の38%にあたる。

昭和60年の同様の計算では270万ha分だったので、わずか7〜8年で、1000万ha以上の土地が輸入されたことになる。

■不動産鑑定士 芳賀則人氏がさらにあげる地価下落9の理由

1.出生率 1.47人 少子高齢化社会(すでに持家率は60%以上)
2.阪神大震災による所有意識の変化
3.不良債権問題の未解決
4.マンション供給過剰(平成6〜7年は16万戸、平年の3〜4倍)
5.特定優良賃貸住宅供給促進制度の拡充(安い賃貸住宅が増える)
6.固定資産税・相続税等の税負担の上昇
7.生産緑地法改正による農地の宅地化
8.給与所得減少による購買力低下
9.定期借地権の拡充

林社長は、上記の論点を説明した上で、「10の要因が解消、軽減された時こそ、すでに上昇反転しているのだと思っても良いのでは」と、必ずしも悲観していないと付け加えている。
そして、「売却しなければ実現しない「相場」、いわば虚構の評価額に惑わされる事なく、各人がその人生に立脚した土地への視点を持つことが大切なことだと思いますが、いかがでしょうか。」と、目先の地価に振り回されず、自らの人生観+必要とする使用価値に基づいた投資をするように薦められていて、さすが!と思った。

(前田注)
さらに久米さん独自の見解を追加されているが、その中で上記のものとは別の観点のものを転載します。

2.都心部駅前立地から16号線へ

駅前にある企業の象徴、金融機関、大手小売業は、今後規制緩和+電子商取引で競争が激化する。また、地価高騰は、住宅を郊外に追いやって、ロードサイド店で買い物をする(=都心や駅前まで出てこない)スタイルを定着させつつある。それから、10年前、大学生の時に米国の都市計画視察に参加させてもらった時に知ってショックを受けた、ロスなど大都市のアンパン現象(ダウンタウンにカラードが増え(偏見!)治安が悪化して、郊外にホワイトが出ていく)も、長期的には心配である。

3.情報ネットワーク

在宅勤務の話などは未知数の部分も多いし、現にマンツーマンの営業を減らすと売上げが落ちる事例も多いのだが、今後、わざわざ都心の本社に通わずとも出来る仕事が増えていくことは間違いがないと思う。日本企業はコスト意識が発達しているのに、なぜ社員の交通費に無頓着なのかとクビを傾げた外国の学者がいたが、新幹線の通勤コストとテレビ会議も含めた通信コストがこの数年で逆転していけば、かなり状況が変わるだろう。

4.税制の変更

これがどうなるかは誰にも分からないが、「土地で持っている方が得」という状況が変わると、企業にとって取得の理由が一気になくなる。前出の保有税の話だけではない。国際会計基準に準拠した時価主義に変われば「ありがたい含み」はなくなる。さらに、米国型の直間税率の見直し=直接税の引き下げがおきると、あえてリスクを犯してまで節税をする理由が少なくなる。

------------------久米さんのメールからの転載終わり------------------

この中に出てくる、「各人がその人生に立脚した土地への視点」が最も重要な観点だと思います。自分自身がその土地に価格以上の価値を見出せるかどうか。これさえチェックすれば、少なくとも損はしないはずです。
つまり、土地を資産とは考えず、超大型の耐久消費財と考えれば いいのではないでしょうか。

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前回のおまけの問題
(メーカ)−(問屋)−(小売店)−(ユーザ)
のような販売ルートを持つメーカにとって、真の顧客は誰でしょう?

解説
ユーザという意見が多かったようですが、末次氏の解答は小売店でした。
・問屋は小売店の要請に応じて、メーカから仕入れる。
・小売店はユーザに売れるものを問屋から仕入れる。
・ユーザは小売店の店頭にないものは買わない。
この共通項は小売店である。ということでした。

アンドロメテック
前田 慎一
E-mail:maeda@andrometec.com



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